米 Vanderbilt大学の Lili Liu 氏らの報告。研究成果は、2025年7月29日「American Journal of Preventive Medicine」に掲載。
米国の低所得層や黒人/アフリカ系アメリカ人層における、歩行速度などの要因が死亡率に与える影響を調査。南部コミュニティコホート研究(SCCS:Southern Community Cohort Study)のデータを使用。 2002年から2009年にかけて、研究開始前の1年間にがん治療を受けていない40歳から79歳までの約85,000人が対象。
ベースライン時の、通常、ゆっくり歩くこと(動き回る、職場で歩く、犬の散歩をする、軽い運動をするなど)と速く歩くこと(階段を上る、早歩きをする、運動をするなど)に費やす1日あたりの平均時間(分)及び死亡との関連性が確立されている5つの行動因子(喫煙、飲酒、余暇の
身体活動、座位行動、食事の質)を収集。死亡に関する情報は2022年12月31日まで追跡。毎日の歩行時間と全死因死亡率および死因別死亡率との関連を分析。分析は2023年9月から2024年6月まで実施。
以下 主な結果
中央値16.7年(範囲2.0~20.8)の追跡期間中に、2万6,862人が死亡。

全死亡率と毎日の速歩時間の間には有意な関連が認められた。1日15分の速歩で全死亡率が約14%低下(ハザード比[HR]=1.04、95%信頼区間[CI]:0.80~0.93)、1日15分~30分の速歩で全死亡率が約19%低下(HR=0.81、95%CI:0.77~0.85)。一方ゆっくり歩くでは、死亡率の低下は見られたものの有意な関連は認められなかった。(上図参照)
速歩は、余暇時間の身体活動レベルにかかわらず、死亡率の低下と独立して関連。
死因別死亡率は、がんよりも心血管疾患においてより顕著な結果。
対象者全員が速歩の恩恵を受けたものの、ベースラインの併存疾患を抱えていた対象者は、健康な対象者と比較してリスクの減少幅が大きかった。
報告は、「速歩は総死亡率および死因別死亡率の低下と強い関連を示しており、健康状態の改善に向けた実行可能かつ効果的な戦略として、日常的な速歩を促進することの重要性を強調している」とまとめている。
「Daily Walking and Mortality in Racially and Socioeconomically Diverse U.S. Adults」(American Journal of Preventive Medicine) https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(25)00230-2/fulltext