横浜市立大学 医学部公衆衛生学・大学院データサイエンス研究科 桑原 恵介 氏らの研究グループの報告。2024年4月11日 同ホームページで公表。研究成果は2024年4月8日「Hypertension Research」に掲載。
J-ECOHスタディ(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health. Study)参加施設の労働者のうち、2011年度又は2010年度に職域定期健康診断を受診した高血圧の治療中ではない20~64歳81,786人が対象。2011年度または2010年度の血圧値を高血圧治療ガイドライン2019に基づき6群※1に分類して脳・心血管疾患発症との関係を調査した結果。
追跡期間(最大9年間、2012年4月~2021年3月)中に334人が脳・心血管疾患を発症。
血圧が高くなるほど脳・心血管疾患発症リスクは上昇。「正常血圧」群を基準とした調整ハザード比は「正常高値血圧」群 1.98、「高値血圧」群 2.10、「Ⅰ度高血圧」群 3.48、「Ⅱ度高血圧」群 4.12、「Ⅲ度高血圧」群 7.81。「正常高値血圧」の段階から脳・心血管疾患発症リスクが約2倍に上昇。集団寄与危険割合*2は「正常高値血圧」群 8.2%、「高値血圧」群 17.8%、「Ⅰ度高血圧」群 14.1%、「Ⅱ度高血圧」群 4.1%、「Ⅲ度高血圧」群 2.1%。「Ⅱ度高血圧」群、「Ⅲ度高血圧」群の占める割合は低く、「正常高値血圧」群から「Ⅰ度高血圧」群までがほとんど(87%)を占めることもわかった。(上図参照)
報告は、「就労世代においては正常高値血圧の段階から血圧管理に取り組むことが重要であり、企業や医師はそうした従業員の取り組みを後押ししていくことが期待される」とまとめている。
*1 高血圧治療ガイドライン2019における血圧の分類
(1) 正常血圧(収縮期血圧 120㎜Hg未満かつ拡張期血圧 80mmHg未満)
(2) 正常高値血圧(収縮期血圧 120-129mmHgかつ拡張期血圧 80mmHg未満)
(3) 高値血圧(収縮期血圧 130-139mmHgかつ/または拡張期血圧 80-89mmHg)
(4)Ⅰ度高血圧(収縮期血圧 140-159mmHgかつ/または拡張期血圧 90-99mmHg)
(5)Ⅱ度高血圧(収縮期血圧 160-179mmHgかつ/または拡張期血圧 100-109mmHg)
(6)Ⅲ度高血圧(収縮期血圧 180mmHg以上かつ/または拡張期血圧 110mmHg以上)
*2 集団寄与危険割合
集団における疾患に対するリスクファクターの影響力の大きさを推計する指標。
「少し高い血圧でも脳・心血管疾患のリスクは2倍に —就労世代8万人の大規模調査から報告—」(横浜市立大学)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/2024/20240411kuwahara.html
「Blood pressure classification using the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension and cardiovascular events among young to middle-aged working adults」 (Hypertension Research)
https://www.nature.com/articles/s41440-024-01653-3
〔参考資料〕