(解説)11年ぶりに改訂された「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」の運動・身体活動について(healthy-life21.com)

 日本循環器学会をはじめ11学会の合同研究班は、2023年3月10日「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」(全99頁)を公表。
 運動・身体活動に関しては、「運動・身体活動の有効性」「身体的不活動の疫学」「身体的不活動のリスク」「身体活動の動脈硬化性疾患、冠動脈疾患への効果」「運動の潜在的効果」「運動の種類」「有酸素運動」「レジスタンス運動」「座位時間の減少」「運動の実際」「運動のリスクと開始前の医学的評価」で構成。P40からP43に記している。

 冠動脈疾患一次予防における運動・身体活動の推奨とエビデンスレベルは下表のとおり。
 注)エビデンスレベルでは「レジスタンス運動」は直接は取り上げられていない。

 以下、具体的な運動内容について記している「有酸素運動」「レジスタンス運動」「座位時間の減少」について紹介(一部抜粋)

「有酸素運動」
 有酸素運動の目標とする運動強度はリスクと効果の観点から中等度(最大酸素摂取量の40~60%)が奨められる。一般的な指標として、自覚症状に基づくBorg指数で11~13(楽である~ややきつい)程度の運動が奨められる。具体的な運動としては、歩行やゆっくりしたジョギング、サイクリング、水中運動などが推奨される。中等度以上(3メッツ以上)の有酸素運動を1日30分以上、週3回以上(可能であれば毎日)、または週150分以上実施することを目標とする。また若年者や心肺機能が高い患者は、高強度(75分/週)でも同様の効果が得られる可能性がある。さらに中等度以上の運動が不可能な場合でも、家事、職場での低強度の身体活動を行うことが、運動を全く行わないよりは冠動脈疾患を予防する効果が期待されるため、低強度の身体活動も推奨される。

「レジスタンス運動」
 レジスタンス運動については、研究間のバラツキが大きく、わが国におけるエビデンスは乏しく、具体的な実施方法は確立していないが、筋力や筋肉量が低下している高齢者の場合にはレジスタンス運動が体力・筋力の向上や動脈硬化性疾患の危険因子改善に有用である。最大1回反復負荷量(重りを1回は持ち上げられるが2回は持ち上げられない重量)の50~85%(平均70%程度)の重量で可能な最大反復回数(平均的には12回程度)の運動を、1~2分の休憩をはさみ、はじめは1種目1セットから開始し、徐々に増加させ5セット程度(平均的には3セット程度)行うことが多い。上半身・下半身の筋肉を含んだ6~7種目で、連続しない日程で週2~3回を目標とする。

「座位時間の減少」
 座位および臥位時間を減少させるために、運動以外の時間もこまめに歩くなど、できるだけ座位・臥位時間を小刻みに中断することが、運動に加えて奨められる。


「2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン」(日本循環器病学会)(PDFファイル)
 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_nagai.pdf