食品摂取の多様性が将来の認知症発症を予防する!(国立長寿医療研究センター 他)

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 大塚 礼 氏らの報告。国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの研究グループと国立研究開発法人国立がん研究センターの共同研究。2023年3月10日国立長寿医療研究センターホームページで公表。研究成果は2023年2月8日「Clinical Nutrition」に記載。

 「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究(The Japan Public Health Center(JPHC)研究」が対象とする全国11保健所管内に在住の14万人(1990年、1993年当時40~69歳)のうち、食事や認知症(要介護認定情報:2016年まで追跡)に関するデータがそろった8保健所管内の38,797人(45~74歳;男性17,708人、女性21,089人)が対象。

 食事調査票アンケートの「133項目の食品・飲料(アルコールを除く)を1日に何種類摂取しているのか」の得点(「食多様性」スコア)に基づき、対象者を5つのグループに分類し認知症との関連を調査。脳卒中発症を伴わない認知症発症についても、同様に検討。

結果

 11.0年(中央値)の追跡期間中に 4,302人の認知症 (11.1%) を確認。発生率は男性 9.6%、女性 12.4%。

 食多様性と認知症との関連では、女性は1日に摂取する食品の種類が最も少ないグループに比べて、最も多いグループで、認知症発症のリスクは33%低下(ハザード比 0.67、95%信頼区間 0.56-0.78)。一方、男性は食多様性と認知症発症との関連はみられなかった。(上図参照)
 脳卒中発症を伴わない認知症発症についても検討したが、結果は変わらず、女性は有意な関連が保たれたが、男性は関連性を認めなかった。しかし、一人暮らしの男性に限って同様の検討を行うと、多様な食品の摂取が要介護認知症リスクを一部軽減した。同居者がいる男性はこのような関連は認められなかった。

 報告は、「女性のみの結果であったが、認知症発症リスクを少しでも低下させる上で、色々な食品を食べることや食多様性の高い食事をとるための食行動は効果的である可能性が示された」とまとめている。


「国立高度専門医療研究センター6機関の連携事業により食品摂取の多様性が将来の認知症発症を予防することを明らかにしました」(国立長寿医療研究センター)
 https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20230310.html
「Dietary diversity and risk of late-life disabling dementia in middle-aged and older adults」(Clinical Nutrition)
 https://www.clinicalnutritionjournal.com/article/S0261-5614(23)00031-6/fulltext