国立大学法人 群馬大学共同教育学部の 島 孟留 氏らの報告。2023年1月4日群馬大学のホームページにて公表。研究結果は2022年12月31日に「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」に掲載。
低糖質・高タンパク質食(カロリーの比率:炭水化物 24.6%、タンパク質 57.6%、脂質 17.8%)、もしくは対照食(カロリーの比率:炭水化物 58.6%、タンパク質 24.2%、脂質 17.2%)を4週間、健康なマウスに摂取(摂食量は、両グループで同等)させた結果。
対照食摂取群に比べて、低糖質・高タンパク質食摂取群で体重の増加率や血糖値、体重当たりの脂肪重量は有意に低い値だったが、一方で体重当たりの腎臓重量は有意に高値を示した。
マウスの作業記憶を、Y字迷路試験*を用いて評価。対照食摂取群、低糖質・高タンパク質食摂取群間でアームエントリーの回数に変化はなかったが、低糖質・高タンパク質食は成功率(作業記憶)が低下(上図参照)。作業記憶の低下と同時に、乳酸の輸送担体の発現量には影響がなかったが、Dcx mRNA量やIgf-1r mRNA量が、海馬で低下。神経細胞の生存や成長などに関わる栄養因子であるBdnf mRNAやその関連因子(Trkb mRNAなど)には影響はなかった。
以上の結果から、低糖質・高タンパク質食は、海馬の神経可塑性の低下を通じて、作業記憶を低下させることが示唆され、今後、IGF-1の関与をより詳細に探る必要性が示された。
報告は、「本研究成果を足がかりとして、海馬の健康に寄与する食品(栄養成分の組み合わせ・食べ合わせを考えた低糖質・高タンパク質食など)の発展や食生活の提案に期待がかかる」とまとめている。
* Y字迷路試験
マウスに8分間、迷路内を探索させて、アームへの進入順序および進入回数を記録する。マウスが連続して異なるアームを選択した確率を成功率として算出し(成功率=成功回数/[アームへの進入の総数-2])、その確率が高いほど、作業記憶能が高いと評価する。
「低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下-海馬の健康と食生活の関係を示唆-」(群馬大学)
https://www.gunma-u.ac.jp/information/145098