後期高齢者の歯科受診は全身疾患による入院発生の予防効果がある(東京都健康長寿医療センター研究所)

 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム 光武 誠吾 氏らの報告。2023年1月5日東京都健康長寿医療センターホームページにて公表。研究成果は2022年12月13日「Archives of Gerontology and Geriatrics」に掲載。

 北海道に在住する後期高齢者(75歳以上)約80万人のうち、2016年9月から2017年2月のベースライン期間に医療機関を受診した約75万人のうち、入院経験があった者や在宅医療を利用していた者、要介護認定があった者などを除いた432,292名分のレセプトデータを使用。ベースライン期間に歯科受診があった者は149,639名(34.6%)、なかった者は282,653名(65.4%)。 
 歯科受診があった者と、歯科受診がなかった者の特性(性別や年齢、医療費自己負担割合、疾患、健康診断受診の有無、地域)を均等にするため、傾向スコアマッチング法使用して、特性の近い148,032組(合計296,064名)を選出。歯科医療機関への受診(歯科受診)と全身疾患(肺炎、脳卒中発作、急性冠症候群、尿路感染症)による入院発生割合を比較検討した結果。

 2年間の追跡期間(2017年3月から2019年3月)において、歯科受診がなかった者に比べて、歯科受診があった者では、肺炎と脳卒中発作、尿路感染症による入院の発生割合が低かったことが示された(歯科受診あり vs 歯科受診なし;肺炎 4.9% vs 5.8%;脳卒中発作 2.1% vs 2.2%;尿路感染症 2.2% vs 2.5%)。(上図参照)

 また、歯科受診がなかった場合に比べると歯科受診があった場合に、急性期の入院発生は、肺炎で15%、脳卒中発作で5%、尿路感染症で13%の抑制効果が認められた。

 報告は、「後期高齢者における歯科受診の効果を示した本研究成果は、後期高齢者における歯科保健・歯科医療のあり方を検討する上で重要な知見。今後は、本研究で除外した要介護高齢者においても同様に効果が得られるのか、更には、どのような診療行為(検査、処置、治療等)が急性期疾患の発症抑制と関係しているのか、検討を続ける」とまとめている。


「後期高齢者の歯科受診は全身疾患による入院発生の予防効果あり」(東京都健康長寿医療センター研究所)
 https://www.tmghig.jp/research/release/2023/0105.html