神戸大学大学院 永井 洋士 氏らの報告。2022年12月1日神戸大学ホームページにて公表。研究成果は2022年11月29日「Health Research Policy and Systems」に掲載。
2015年に要介護認定を受けていない神戸市在住の70歳以上の高齢者7万7877人が対象。
日常生活の自立度に関する25項目の質問票「基本チェックリスト」を郵送。回答結果と2015年から2019年にかけて収集された要介護認定データを突合し、要介護認定発生との関連を分析。
結果
アンケートを郵送した市民7万7877人のうち、5万154人から回答を得た (回答率:64.4%)。
基本チェックリスト調査から4年後の要介護認定の累積発生率は、回答しなかった人は12.5%、回答した人は8.4%で、回答しなかった人の方が高くなった。
回答者のうち、「周りの人からいつも同じ事を聞く等の物忘れがあると言われますか」(好ましい回答:いいえ)、「自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか」(好ましい回答:はい)、「今日が何月何日かわからないときがありますか」(好ましい回答:いいえ) へ3つの質問に対して、好ましくない回答が多いほど、要介護認定の発生率が高くなった。好ましくない回答の数が0、1、2、3の回答者は、それぞれ4年後の時点で5.0%、8.4%、15.7%、30.2%。(上図参照)
同様に、認知機能低下を伴う要介護認定に限定した場合でも、好ましくない回答が多いほど、要介護認定の発生率が上昇。好ましくない回答の数が0、1、2、3の回答者は、3.4%、6.5%、13.7%、27.9%。
報告は、「基本チェックリストに郵送で回答をしなかった人は、それだけで要介護認定になるリスクが高い人であることが推定できた。また、認知機能に関する簡単な質問で、要介護認定、特に認知機能低下を伴う要介護認定のリスクも推定できた。これらの観測は、リスクが高いと推定される市民に的を絞った対策を行い、認知症の社会負担を減らす糸口を見いだす可能性を示すものです」とまとめている。
「認知機能に関連した簡単な質問により、要介護リスクを推定できる:神戸市基本チェックリスト解析結果」
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/collaborations/2022_12_01_02.html
「Implication of using cognitive function-related simple questions to stratify the risk of long-term care need: population-based prospective study in Kobe, Japan」
https://health-policy-systems.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12961-022-00920-4