大阪大学大学院医学系研究科の坂庭嶺人氏、磯博康氏らの研究グループの報告。2022年5月11日「Age and Ageing」に掲載。
日本全国の40歳から79歳までの約46,000人を対象に、ライフスタイルと将来の死亡時期との関係を明らかにするべく、約20年に及ぶ大規模コホート研究(Japan Corroborative Cohort Study: JACC study)のデータを分析。そして、近年のAI技術でも広く採用されている、ベイジアンネットワーク解析・ニューラルネットワーク分析・マルコフ連鎖モンテカルロシュミレーションなどを応用して、各年齢階級での主要生活習慣8項目(下表参照)の改善による寿命延伸効果と、そのライフスタイルを維持した場合の平均余命を解析。
結果、より若い世代での生活習慣改善がより効果的ではあるものの、6項目以上の改善による寿命延伸効果は、男女ともに80歳でも認められた。特に循環器病・ガン・高血圧・糖尿病・腎臓病に代表される主要な生活習慣病を複数合併している人ほどこのベネフィットは大きく、例えば3つ以上の生活習慣病を有病する場合では、50歳時で8.7年、65歳時で7.2年、80歳時においても3.8年の寿命延伸効果を示した(いずれも0-2項目を基準とした場合)。(上図参照)
また、7項目以上の健康的なライフスタイルを50歳代から維持した場合の平均寿命は最大で男性87.7歳、女性では92.5歳となる事が推定され世界第1位の日本の平均寿命(男性81.5歳:女性86.9歳(2021:WHO公表データ)を大きく上回る結果。
報告は、「本研究結果は、健康的なライフスタイルへの改善・維持が出来た場合の予測値であり、生活習慣病に対する継続的な治療そのものを否定するものではない。多くの生活習慣病を有する人が、継続的な治療を実施した上で自らライフスタイルを改善する事が大切。多重合併症患者ほど生活習慣病の改善が重要となるという知見は、生活習慣病の3次予防ガイドラインなどにおいて重要なエビデンスとなることが期待される」とまとめている。
「ライフスタイルの改善による寿命延伸効果を評価」(ResOU 大阪大学発 自慢の研究をあなたに)
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2022/20220511_1