国立大学筑波大学医学医療系ヘルスサービス開発研究センターの 山岸 良匡 氏らの報告。2022年2月6日「Nutritional Neuroscience」に掲載。
日本を代表する循環器疾患の疫学研究であるCIRCS研究(Circulatory Risk in Communities Study)を実施している秋⽥、茨城、⼤阪の3地域の住⺠で、1985年から1999年の間に健診時に実施した栄養調査に参加した40〜64歳の3,739⼈が対象。1999年から2020年までの最⼤21年間にわたって追跡し、その間に発症した要介護認知症を登録。
栄養調査は、24時間思い出し法で、前日の食事を聞き取った情報をもとに、食物繊維(水溶性および不溶性)と、食物繊維を多く含む食品群であるいも類・野菜類・果物類の摂取量を計算。食物繊維摂取量と要介護認知症リスクおよび脳卒中既往のある認知症と脳卒中既往のない認知症のタイプ別のリスク。水溶性食物繊維・不溶性食物繊維・いも類・野菜・果物摂取量と要介護認知症リスクとの関連を分析。
結果
食物繊維摂取量が「下位25%群」(第一分位)に対する他の群の要介護認知症リスク(多変量調整ハザード比)は、「25%〜50%群」(第二四分位)0.83(95%信頼区間0.67-1.04)、「50%〜75%群」(第三四分位)0.81(同0.65-1.02)、「上位25%群」(第四四分位)0.74(同0.57-0.96)で、食物繊維の摂取が多いほど要介護認知症の発症リスクが低下する傾向が見られた。この関連は、脳卒中既往を伴わない認知症においてのみ見られた。(上図参照)
食物繊維のうち水溶性食物繊維については、摂取量が「下位25%群」に対し、要介護認知症の発症リスクは「25%〜50%群」0.72(同0.58-0.90)、「50%〜75%群」0.77(同0.62-0.96)、「上位25%群」0.61(同0.48-0.79)と、より強いリスク低下傾向が見られた。(上図参照)
いも類摂取量においても同様の関連が見られたが、野菜類、果物類ではこのような関連は見られなかった。
報告は、「認知症の成因にはまだ不明なことが多く、1つのコホート研究の結果だけで因果関係を断定することはできないが、研究結果は、認知症予防につながる知見の一つと言える」とまとめている。
「食物繊維を多く摂る人は要介護認知症の発症リスクが低下する」(TUKUBA JOURNAL)
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20220210140000.html
「Dietary fiber intake and risk of incident disabling dementia: the Circulatory Risk in Communities Study」
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1028415X.2022.2027592