1日1杯の牛乳は日本人女性の脳梗塞を予防する可能性(岩手医科大学)

 岩手医科大学衛生学公衆衛生学講座 丹野高三氏らの報告。2021年10月25日に「Nutrients」に掲載。

 岩手県北地域コホート研究参加者で心血管疾患(CVD)のない40〜69歳の14,111 名(男性4,253人と女性9,868人)が対象。牛乳の摂取頻度と脳卒中発症リスクとの関連を、10年間の追跡データを用いて解析した結果。

 食物摂取頻度調査法を用いて、コップ1杯の牛乳を飲む頻度の回答結果に基づいて、「週2杯未満」、「週2杯以上7杯未満」、「週7杯以上12杯未満」、「週12杯以上」の4グループに分けて、岩手県地域脳卒中登録事業の脳卒中発症データと比較検討。

 フォローアップ中に、総脳卒中478人(男性208人、女性270人)、脳梗塞263人(男性134人と女性129人)、脳出血210人(男性72人と女性138人)を確認。

 脳梗塞発症リスクについて、女性は牛乳摂取頻度が「週2杯未満」のグループに比べて、「週7杯以上12杯未満」のグループで47%リスクが低下。男性は統計学的に有意なリスクの減少は見られなかった。(上図参照)

 報告は、「牛乳摂取が脳梗塞発症リスクを低下させる理由として ① 牛乳を飲む人では牛乳を飲まない人(週2杯未満)に比べて、タバコを吸う人や大量飲酒する人が少なく、習慣的に運動している人、魚・大豆タンパクや野菜・果実を多く摂る人が多い傾向が見られる。牛乳を1日1杯飲む人の健康的な生活習慣・食習慣が脳卒中発症リスク低下に影響した可能性が考えられる。② 本研究対象者も、牛乳を飲む人では牛乳を飲まない人(週2杯未満)に比べて、血圧が低い傾向が見られた。高血圧は脳卒中の最大の危険因子で、牛乳に含まれるミネラルによって血圧上昇が抑制され、脳卒中の発症リスクが低下した可能性が考えられる。一方、男性で関連が見られなかった原因は、男性は女性に比べて、牛乳摂取以外の脳卒中の危険因子(喫煙や大量飲酒)を持っている人が多く、牛乳摂取による脳卒中発症への影響を見出しにくかった可能性がある。男性の牛乳摂取と脳卒中発症リスクとの関連を明らかにするには、さらなる研究が必要」と考察している。


「Association between Milk Intake and Incident Stroke among Japanese Community Dwellers: The Iwate-KENCO Study」
 https://www.mdpi.com/2072-6643/13/11/3781