高齢社会における地域に根差したコミュニティ活動の有効性を検証 ~国際基準で評価された「日本モデル」を世界に向けて発信~(順天堂大学健康総合科学先端研究機構)

 2021年11月19日学校法人順天堂のプレスリリース。順天堂大学健康総合科学先端研究機構のミョーニエンアング湯浅資之氏らの研究グループの報告。高齢者コミュニティの調査を行い、世界保健機関(WHO)が研究課題として定める「高齢者のための地域レベルの社会的イノベーション(CBSI*1)」として報告。

 各地域に高齢者が参加できるコミュニティ活動が多数存在しているコミュニティをCBSIとして位置づけ、介護予防運動などの運動活動グループ(CBSI 1)。読書や合唱、編み物などの趣味を行う社会・文化的活動グループ(CBSI 2)に分類。それらの運営形態と高齢者を取り巻く環境およびCBSIと生活の質との関わりについて、2018年11月~2021年1月に、243人の参加者(年齢中央値74歳)のアンケートによる横断調査と複数の詳細なインタビュー(聞き取り)を実施、分析した結果。

 高齢者のコミュニティ活動の運営方法や参加者への効果を定量的・定性的に分析したことで、日本のCBSIが、WHOが定める「健康的な高齢化*2」に貢献し、高齢者の生活の質の保持に寄与していることを示す構造モデルを提示。(下図参照)

 調査によって明らかになった日本の高齢者のためのCBSIの特徴
1 日本のCBSIは公共のスペースという環境において参加者の自発的な参加や運営により維持されており、トレーナーなど指導的な立場をする人材をボランティアなどのコミュニティリソースでまかなっている。
2 CBSI 1(運動活動グループ)は、健康増進と社会参加のための集団行動の良い例で、孤独感を減らし、高齢の地域住民の間の社会的つながりを維持する機会を提供している。
3 CBSI 2(社会・文化的活動グループ)は趣味に基づいて価値観を共有する場として機能し、高齢者の自主性を高め、自分の興味に基づいた生活を楽しむ助けとなっている。

 報告は、「日本のCBSIが地域に住む高齢者にとって社会的・心理的・身体的な豊かさや生活の質の保持にどのように役立てられているのかを示すことができた。今後この報告内容がアジア及び世界各国の社会政策の策定に適用されることが期待される。一方、2020年より始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、日本国内の多くの地域でコミュニティ活動が無制限、または断続的な活動停止を余儀なくされている。今後は高齢者の健康増進や生活の質の保持のためにもデジタル技術の活用が高齢者コミュニティにおいてもますます必要になることから、『デジタルインクルーシブで健康的な高齢者コミュニティ』についての研究を進めている」とまとめている。

*1 CBSI(Community based social innovation:高齢者のための地域レベルの社会的イノベーション): WHOの定義では、高齢者が自分自身や仲間をケアする際の自己効力感を高め、ウェルビーイングを維持し、社会とのつながりや社会的包摂につながる地域レベルの取り組み。

*2 健康的な高齢化:WHOが定めた概念で、高齢者の価値観に応じて機能的能力が維持されることを意味。


「高齢社会における地域に根差したコミュニティ活動の有効性を検証」(順天堂)
 https://www.juntendo.ac.jp/news/20211119-01.html

この報告は、2021年8月12日に「The Gerontologist」のオンライン版に掲載。
「Age-friendly environment and community-based social innovation in Japan: A mixed-method study」
 https://academic.oup.com/gerontologist/advance-article/doi/10.1093/geront/gnab121/6348958