英・Huma TherapeuticsのDavid Plans氏らの報告。 2021年11月9日「European Heart Journal – Digital Health(オンライン版)」に掲載。
UKBiobank(遺伝や環境が疾患に及ぼす影響を調査する長期大規模コホート研究。2006~10年に英国在住で37~73歳の50万人以上が登録)参加者103,712人に手首装着型の加速度計を送付。このうち、データを正しく収集できなかった者、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、心血管イベントの既往やデータ収集中のイベント発生者などを除外した8万8,026人(平均年齢61.43歳、女性57.9%)が対象。
対象者は加速度計を7日間にわたり装着、睡眠時間、睡眠の不規則性、入眠時刻を記録。入眠時刻と心血管イベント(心筋梗塞、心不全、慢性虚血性心疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作の初回発生)の関連を検討。
入眠時刻を見ると、22時以前が3,446人、22~22時59分が1万6,975人、23~23時59分が3万5,884人、24時以降が3万1,721人。入眠時刻別に見た平均睡眠時間および睡眠の不規則性の平均時間は、22時以前が6.5時間と3.2時間、22時~22時59分が6.5時間と2.1時間、23時~23時59分が6.2時間と2.0時間、24時以降が5.5時間と2.8時間。4つの時間帯のうち、24時以降において、喫煙率、糖尿病または高血圧の既往歴が最も多かった。
平均追跡期間5.7年(±0.49年)の間に、合計3,172例の心血管イベント発症が報告された。
年齢と性別を考慮した基本分析では、睡眠開始時刻が午後10時~10時59分の場合、心血管イベント発症率が最も低くなった。睡眠時間、睡眠の不規則性、および確立された危険因子を考慮した追加モデルでは、この関連性は弱まらず、午後10時未満の睡眠開始のハザード比は1.24(95%信頼区間、1.10-1.39、P<0.005)、1.12(1.01-1.25、P=0.04)、1.25(1.02-1.52、P=0.03)となった。(上図参照)
感度分析を行ったところ、女性では22時以前のハザード比はHR 1.34(5%信頼区間、1.11~1.61、P<0.005)、および24時以降1.63(1.20~2.21、P<0.005)で有意に心血管イベントリスクが高かった。男性では22時以前1.17(1.01-1.35、P=0.03)のみ有意差が認められた。
報告は、「特に女性にとって、入眠のタイミングと心血管イベント発症リスクとの関係の可能性を示唆。また、加速度計対応のウェアラブルデバイスを介して睡眠パラメータに関する情報を収集することの有用性を示した。これは、新しい心血管イベント発症リスクの指標として役立つ可能性がある」とまとめている。
「Accelerometer-derived sleep onset timing and cardiovascular disease incidence: a UK Biobank cohort study」
https://academic.oup.com/ehjdh/advance-article/doi/10.1093/ehjdh/ztab088/6423198