1年間の僅かな身体活動を増やす介入で中・高強度の身体活動の増加を誘発!介入終了後もその習慣が維持される(国立健康・栄養研究所 他)

 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所の宮地元彦氏らの研究結果。2021年10月25日「BMC Sports Science, Medicine & Rehabilitation」に掲載。

 日本人成人を対象に行われている縦断的コホート研究「運動と食事の相互作用に関する大規模介入研究(NEXIS:Nutrition and exercise intervention study)」の参加者から、63歳以上、脳卒中・心疾患・腎不全の既往者、歩行に支障のある人を除外。身体活動を評価し、身体活動量がガイドラインで推奨されている3.3METs・時/日以上かつ1万歩以上歩行している対象者を「活動的な群」、していない参加者を無作為に「介入群」または「対照群」に割り付け3群間で比較検討。最終的に研究継続参加の同意を得られたのは「活動的な群」234人、「介入群」186人、「対照群」163人。

 「介入群」への介入内容は、中・高強度の身体活動の増加を目的とし、1年間で5回の簡単なカウンセリングを実施。1年間の目標は、ベースラインに対して歩数を1万歩/日または+3000歩/日増やすこと。カウンセリングは、少量の、あるいは軽い強度の身体活動を推奨(ex.テレビのコマーシャル中にストレッチ運動をする。ファッショナブルなスニーカーを買う。可能であれば昼食に出かける。駅のエレベーターの代わりに階段を使用する)ことで、身体行動の漸進的な変化を促すように設計。身体活動は、腰装着型加速度計ベースのデバイスを使用して、ベースライン時、介入終了時、介入終了から1年後に測定。さらに、栄養、健康、フィットネスに関するいくつかのパラメータも測定。

結果(一部抜粋)

 「介入群」は、ベースライン時に8,415±1,924歩だった歩数が、1年後には9,493±2,575歩と大幅に増加。中~高強度の身体活動は0.9METs・時有意に増加。(上表参照)

 1日の活動時間は、3MET以上、4MET以上、5MET以上の活動に費やした時間が、それぞれ11分、6分、3分増加。この身体活動の増加は、介入終了から1年後も観察可能であった。

 摂取エネルギー量はベースライン時と介入終了時点は群間差がなかったものの、介入終了1年後には「介入群」のほうが有意に少ないという群間差が生じていた(対照群1,819±549 vs 介入群1,707±452kcal/日,p=0.034)。

 その他、「介入群」のみ、1年間の中~高強度の身体活動の変化と安静時心拍数の変化(r = – 0.22)、2年間の中~高強度の身体活動の変化とウエスト周囲径の変化(r = – 0.08)およびVO2peak(r = 0.23)との間に有意な相関関係が認められた。その他評価した柔軟性、垂直とびなどのデータには有意な変化がなかった。

 報告は、「身体活動量の増加を目的とした1年間の軽度身体活動の推奨は中・高強度の身体活動の有意な増加を誘発し、かつ中・高強度の身体活動が増加した対象者の多くは介入終了から1年後もそれを維持していた。一方、計2年の観察では健康関連パラメータに顕著な変化は生じず、より長期間の追跡が求められる」とまとめている。


「Effect of a 1-year intervention comprising brief counselling sessions and low-dose physical activity recommendations in Japanese adults, and retention of the effect at 2 years: a randomized trial」
 https://bmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13102-021-00360-7


〔参考〕