同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の栁田昌彦氏らの報告。2021年5月7日「Environmental Health and Preventive Medicine」に掲載。
大規模コホート研究「NIPPON DATA2010※」のデータを用いて検討。20歳以上の参加者2,898人から、データ解析に必要な情報が欠落している人などを除外した2,752人(男性1,172人、女性1,580人)が対象。1日4時間以上を「テレビの長時間の視聴」と定義して、関連因子を検討。社会経済的因子については、雇用状況、教育歴、同居家族の有無、および世帯支出を評価。その他、喫煙・飲酒・運動習慣、心血管疾患の既往を把握。男性と女性、および60歳未満と以上に分けて分析検討。
主な結果は以下のとおり。
対象者の平均テレビ視聴時間は 2.92 時間。2,752 名のうち、809名 (29.4%) が長時間のテレビ視聴。平均テレビ視聴時間は 5.61時間。長時間テレビを見ない対象者の平均テレビ視聴時間は 1.81 時間。年齢が上がるにつれて長くなり、60歳以上では有意に長かった(上図参照)。
定職を有さないこと(学生、退職者、失業者)は、男性と女性、および60歳未満と以上のすべてのカテゴリーで、長時間テレビ視聴に有意に関連。定職を有さない場合の長時間テレビ視聴に該当するオッズ比(OR)は以下の60歳未満の男性OR3.37(95%CI;1.50~7.56)、60歳以上の男性OR4.77(95%CI;3.31~6.88)、60歳未満の女性OR3.77(95%CI;2.43~5.84)、60歳以上の女性OR4.21(95%CI;2.65~6.70)。
教育歴は女性において有意に関連。教育歴が13年以上を基準とした場合、60歳未満では教育歴10~12年でOR1.72(95%CI;1.09~2.71)、10年未満はOR2.63(95%CI;1.21~5.69)、60歳以上では同順にOR2.00(95%CI;1.15~3.49)、OR2.34(95%CI;1.32~4.16)。(上図参照)
生活状況は、60歳未満の女性で配偶者と同居している人に比較し配偶者以外の家族と同居している人〔OR1.95(95%CI;1.11~3.41)〕、60歳以上の女性では独居者〔OR1.84(95%CI;1.22~2.75)〕も、長時間テレビ視聴者が多かった。
世帯支出は、長時間のテレビ視聴時間と有意な関連はなかった。
男性では就業状況以外に長時間テレビ視聴と有意に関連する因子はみつからなかった。
報告者らは、「年齢が高くなるほどテレビ視聴時間は長くなることがわかった。高齢者は意識的にテレビ視聴時間を短縮する必要がある。また就業状況は性別や年齢に関係なく、テレビ視聴時間が長いことと関連していた。ただし教育歴との関連には性差が存在する。テレビ視聴時間を短縮するための介入において、これらの因子を考慮する必要がある」と結論づけている。
※ NIPPON DATA・・・国民健康・栄養調査や循環器疾患基礎調査の参加者を対象に実施されている追跡研究で、滋賀医科大学公衆衛生学部門が中心となって1980年にスタート。得られた知見は疾患ガイドラインのリスク評価指標として採用されるなど、信頼性の高い研究として知られている。
「Association between socioeconomic status and prolonged television viewing time in a general Japanese population: NIPPON DATA2010」
https://environhealthprevmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12199-021-00978-6