平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、新潟県長岡、茨城県水戸、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内の在住者のうち、平成7年(1995年)と平成10年(1998年)にアンケート調査に回答した45〜74歳の74,070人(男性33,709人、女性40,361人)を平成25年(2013年)まで追跡した調査結果に基づいて、甘味飲料の摂取と大腸がんの罹患リスクとの関連を調査した結果。「Cancer Epidemiol Biomarkers Prev」2021年4月公開。
甘味飲料は、食事アンケート調査で、β-カロチン含有飲料、カルシウム飲料、缶コーヒー、100%りんごジュース、100%オレンジジュース、乳酸菌飲料、清涼飲料水、ドリンク剤の摂取量を算出。「摂取しない」グループと、摂取している人を均等に「少ない」、「多い」の2つのグループの3つのグループに分け、「摂取しない」と比較したその他のグループの、その後の大腸がん罹患リスクとの関連を調査。 74,070人の平均年齢はベースラインで56.5歳で、平均ボディマス指数(BMI)は23.5、平均1日消費量は男性286mL/日、女性145mL/日。
結果、約15年間の追跡調査中に、1,648人が大腸がん(結腸がん1,121人、直腸がん527人)と診断された。男女とも、甘味飲料を摂取しないグループと比べて、摂取しているグループでの大腸がん罹患リスクとの関連はみられなかった。しかし、部位別に関連をみたところ、女性の結腸がんと関連していた(HR=1.36、95%CI、1.03–1.78、≥134mL/日vs.非消費者)。非消費者と比較して、甘味飲料を消費した女性の近位結腸がんは、134 mL /日未満の甘摂取で1.47(95%CI、1.03–2.10)、134 mL /日以上の摂取で1.45(95%CI、1.01–2.09)だった。(上図参照)
報告者らは「全体的には、甘味飲料の摂取は大腸がんのリスクと関連していないことを示唆。しかし、女性の結腸がんリスクとの正の関連が認められた。本研究の限界として、甘味飲料摂取量の把握が自己申告であることから、糖尿病患者や肥満者は糖質の摂取を制限していたことや摂取量を少なく報告した可能性を考慮できないことや、甘味飲料を摂取していない人は、大腸がんのスクリーニング検査をより受けていたことから、大腸がんと診断された人が多く、甘味飲料とがんとの関連が過小評価されている可能性などがあげられる。甘味飲料と大腸がんの部位別に検討した研究は少なく、今後もさらなる研究が必要」とまとめている。
「甘味飲料の摂取と大腸がんリスクとの関連について」(多目的コホート研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8667.html
「Sugary Drink Consumption and Subsequent Colorectal Cancer Risk: The Japan Public Health Center–Based Prospective Cohort Study」
https://cebp.aacrjournals.org/content/30/4/782.long
〔参考〕
大腸がんの症状と部位については「m3.com」の「大腸がんの基礎知識と最新の医療現場」の図が解りやすいと思います。
https://pharmacist.m3.com/column/study/1216