新型コロナウイルスのパンデミックによるメンタルヘルスの状態と身体活動(生活活動、運動)時間の変化

 カナダのマクマスター大学 Maryam Yvonne Marashiらの新型コロナウイルスのパンデミックが、運動不足や座りがちな生活スタイル、メンタルヘルスにどう影響したかを調査することを目的に2020年4月~6月に1,669人(82.4%は女性、85.6%はカナダ国内)を対象にオンラインで実施した調査結果。2021年4月1日PLOSONEに記載。

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、強い心理的ストレスや、中程度の不安やうつ病を訴えるようになった人が多いことが明らかになった。ほとんどの人(91.9%)は4週間以上、社会的に孤立した状態に置かれていたと回答。有酸素運動は22分減少、筋力トレーニングは32分減少、座りがちな時間は33分増加したと回答。

 パンデミックにより身体活動量が大きく減少した人は、心理的ストレスのスコアが22%上昇するなど、メンタルヘルスの悪化が大きい傾向。運動量の低下した人は、「不安の増大」「社会的支援の不足」「運動できる環境へのアクセスのしづらさ」などを感じている結果。逆に、身体活動レベルを平常時と同等に維持していたり増やした人は、メンタルヘルスの状態は比較的良いことが分かった。身体活動量の変化量とうつレベル、不安レベルとの間に、負の相関がみられた。(上図参照)

 活動的でないことに加えて、対象者の座っている時間が増え1日あたり10%または約30分増加。それほど多くはないように思われるかもしれないが座りがちな時間を1時間増やすだけで、6年間で死亡リスクが12%高くなる。また、座りがちな行動は、身体的健康の低下だけでなく、メンタルヘルスの知覚評価の低下や生活の質の低下などのメンタルヘルスの低下にも関連している。座りがちな行動の長期化は炎症マーカーを増加させ、うつ病や不安の症状を悪化させる可能性がある。座りがちな時間を短い頻繁な休憩(たとえば、30分ごとに1〜2分)中断することで、座りがちな行動の健康への悪影響を打ち消すのに十分な場合がある。研究によると、短く頻繁に休憩する方が、回数の少ない休憩を長くとるよりも順守しやすく、座りがちな行動を1日あたり35分以上減らすことができ、今回報告された増加を打ち消すのに十分である。

 報告者らは、「運動は不安やうつ病を軽減する効果を期待できまる。しかし、多くの人は強い不安を感じており、運動をするのを困難に感じている。平常時に運動を習慣として行うことを困難に感じていた人は、パンデミックによりさらに困難な状況に置かれいる。活動意欲の低下はうつ病の初期症状でもあり、運動を継続できるようにするために、早期のサポートが必要」とまとめている。


「A mental health paradox: Mental health was both a motivator and barrier to physical activity during the COVID-19 pandemic」
 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0239244


〔管理者コメント〕

 確かにメンタルヘルスの状況と身体活動時間の関係はみられるが、「かなり改善群」は他の群と比べて大変ばらつきが大きい。「かなり改善群」は他の要因の影響が大きいことが伺える。