日本人を対象に歯の本数や歯周病の重症度が認知症の医療費と有意に関連することを明らかにした愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の嶋崎義浩氏らの報告。「American Journal of Alzheimer’s Disease and Other Dementias」に2月25日掲載。
三重県歯科医師会が2014年度に行った75歳と80歳の歯科検診受診者のうち同年度内に認知症治療を受けず、かつ2019年3月まで生存していた4,275人(75歳が2,573人、80歳が1,702人)の結果と認知症医療費との関連を検討。
口腔健康状態は、歯の本数、歯周病の重症度(CPI:Community Periodontal)で評価。医療費は、2015年4月~2019年3月の4年において主病名が認知症であった患者の各医療機関での医療費の合計金額。その他、アンケートにより、喫煙習慣、BMI、既往疾患(脳卒中、心血管疾患、糖尿病)を把握。
結果、4年間の追跡中に201人が新たに認知症の治療を受けた。認知症の人の医療費は、歯が20本以上ある人に対して9本以下の人では4.13倍(95%信頼区間1.79~9.56)、CPI0~2(歯周病なし~歯科検診時の歯肉出血または歯石のみ)の人に対してCPI4(6mm以上の歯周ポケット)の人では3.48倍(同1.71~7.08)だった(いずれもP=0.001)。歯の本数が10~19本、CPIが3(4~5mmの歯周ポケット)の場合の医療費は、対照群と有意差がなかった。(上図参照)
報告者らは、「口腔の健康状態は、認知症の医療費と関連していた。歯の喪失を防ぎ、歯周の健康を維持することは、認知症の医療費抑制に貢献するかもしれない」とまとめている。
「Association Between Oral Health and the Medical Costs of Dementia: A Longitudinal Study of Older Japanese」
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1533317521996142?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub%3Dpubmed&