フラボノイドの豊富な果物の摂取が多いと虚血性心疾患のリスクが低かった!多目的コホート研究(JPHC Study)

 平成7年(1995年)に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、平成10年(1998年)に茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の計9保健所(呼称は2019年現在)管内に在住で45~75歳の男女のうち、循環器疾患及びがんの既往がなく、食事調査アンケートに回答した87,177人(男性39,840人、女性47,337人)について平均約13.2年間追跡した調査にもとづいて、フラボノイド(果実、お茶、チョコレート、ナッツや赤ワインなどに多く含まれるポリフェノールの一種)の豊富な果物の摂取と虚血性心疾患の発症リスクとの関連を調べた結果。
 今回の研究では、フラボノイドの量が100g当たり50 mg以上の果物をフラボノイドの豊富な果物と定義した。この中には、りんご、なし、柑橘類(みかん、その他の柑橘類)、いちご、ぶとうが含まれる。食事調査アンケートの摂取頻度と、1回に摂取する量から1日当たりのフラボノイドの豊富な果物と、その個々の果物の摂取量をそれぞれ算出し、摂取量を5つのグループに分け、摂取量が最も少ないグループを基準として、その他のグループのその後の虚血性心疾患の発症リスクを検討。
 約13.2年間の追跡期間中に、1,156人が虚血性心疾患を発症。フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比べ、摂取量が最も多いグループでは、虚血心疾患の発症リスクが0.78(95%信頼区間:0.62-0.99)と低下しており、摂取量が多いほど発症リスクが低かった。(上図参照)個別の果物では、柑橘類において、摂取量が最も少ないグループと比べ、最も多いグループの虚血性心疾患の発症リスクが低かったことが分かった。また男女別では、女性では、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比べ、最も多いグループでは、虚血性心疾患の発症リスクが低かったが、男性では関連がみられなかった。
 報告者は、「本研究では、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、特に柑橘類において、虚血性心疾患の発症リスクが低かったことが分かった。この理由として、フラボノイドやビタミンCによる抗酸化作用が、動脈硬化の抑制、および炎症を抑えることなどにより、虚血性心疾患の発症リスクを予防したことが考えらる。男性でこの関連がみられなかった理由として、喫煙などの影響により、フラボノイドの豊富な果物の潜在的な保護効果が減衰した可能性が考えられる」とまとめている。

※ JPHC Study (Japan Public Health Center-based prospective Study):厚生労働省がん研究班による多目的コホート研究

多目的コホート研究(JPHC Study)
「フラボノイドの豊富な果物の摂取と虚血性心疾患発症リスクとの関連」
 https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8497.html