総コレステロールの取り扱い(halthy-life21.com)

日本動脈硬化学会が、2016年4月26日にnon-HDLコレステロール※1を重視することから、一般診療ではFriedewald式(F式)でLDLコレステロール※2を求めることを基本とするとの見解を発表しました。これを受けて2018年からの特定健診項目の見直しに合わせて総コレステロール※3を復活させることが確実になりました。


※1 HDLコレステロール(high-density lipoprotein cholesterol:高比重リポたんぱく質)
体内の末梢で酸化したコレステロールを取り除き、動脈硬化などを防ぐ働きがあることから善玉コレステロールともいわれる。
※2※6 LDLコレステロール(low-density lipoprotein cholesterol:低比重リポたんぱく質)
コレステロールを体内の末梢まで運ぶ働きがある。過剰になると動脈硬化などの原因となるところから、悪玉コレステロールともいわれる。このLDLコレステロールの中に小型化したsmall dense LDL(小粒子高密度LDL)がある。小型化したLDLコレステロールは、普通のLDLコレステロールに比べて酸化しやすくより動脈硬化の原因になる。
※3 総コレステロール(total cholesterol:TC)
血液中のコレステロールの総量。LDLコレステロールやHDLコレステロールほかを合計した値。
※4 中性脂肪値(triglyceride:TG)
中性脂肪(トリグリセリド)は体を動かすエネルギー源となり、余った分は蓄えることができる。体温を一定に保ったり、体を衝撃から守る働きもしている。
※5 レムナント(remnant)
レムナントは脂肪が不完全燃焼したときにできる燃えかすのようなもの。内臓脂肪の蓄積に伴って血液中に増えやすい物質。中間型リポたんぱく(intermediate density lipoprotein:IDL)とも呼ばれる。


動脈硬化学会が、non-HDLコレステロールを重視と発表した理由

1 LDLコレステロールの測定において検査メーカー間の測定値が統一されたも のではなく、ばらつきがある。
2 LDLコレステロ ール値の推定値(Friedewald式)は、「総コレステロール値ー HDLコレステロール値ー5分の1の中性脂肪値※4」で算出可能である。
3 Friedewald式では、中性脂肪が400㎎/dLを超えた場合には使用不可である。この場合は、non-HDLコレステロール(総コレステロール値-HDLコレステロール値)を使用する必要がある。
4 LDLコレステロールだけだと、動脈硬化を促進する因子であるレムナント※5やsmall dense LDLコレステロール※6等が無視されてしまう。
5 糖尿病やメタボリックシンドロームでは、LDL-コレステロール値が高くなくても中性脂肪値が高くなりやすい。

などです。

脂質異常症の生活習慣、食事療法、運動療法に関して動脈硬化学会の資料を確認しておきましょう。

cholesterol1

・ 塩分6g…概ねラーメン1杯出汁まで飲み干した場合に相当
・ アルコール25g…日本酒1合、ビール中瓶(500ml)1本に相当

cholesterol2

・ 飽和脂肪酸
脂質の材料で、エネルギー源として大切な脂肪酸です。乳製品、肉などの動物性脂肪や、ココナッツ油、やし油など熱帯植物の油脂に多く含まれています。溶ける温度が高く、常温では固体で存在します。そのため体内では固まりやすく、また、中性脂肪やコレステロールを増加させる作用があるため、血中に増えすぎると動脈硬化の原因となります。重要なエネルギー源であるとともに、摂取量が少なすぎても多すぎても生活習慣病のリスクを高くします。少なすぎると脳出血のリスクが高くなります。多すぎると冠動脈疾患、糖尿病のリスクが高くなります。

・ 不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに多価不飽和脂肪酸には、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸などの種類があります。主に植物油や魚に多く含まれ、体の中で合成できないため食べ物からとらなければならない必須脂肪酸もこの仲間です。数個の二重結合を持つことから酸化されやすいため、これを含む油脂は劣化しやすいという特徴があります。
一価不飽和脂肪酸は、オリーブオイルなどの油脂や肉類に多く含まれています。
n-6系脂肪酸(オメガ6)のほとんどはリノール酸です。リノール酸は必須脂肪酸です。しかし、とり過ぎはアレルギーなどの炎症と関係することから、適度な摂取が大切です。リノール酸は、大豆油、コーン油、サフラワー油などに多く含まれています。
n-3系脂肪酸(オメガ3)には、調理油などに含まれている必須脂肪酸のα(アルファ)-リノレン酸、魚類に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などがあります。n-3系脂肪酸は、生活習慣病の予防に役立つ働きとして、血中の中性脂肪を下げたり、血液をさらさらにして動脈硬化を防いだりすることなどがわかっています。
また、不飽和脂肪酸は、シス(cis)型とトランス(trans)型に分けられます。天然の不飽和脂肪酸のほとんどは、炭素の二重結合がすべてシス型です。これに対して、トランス型の二重結合が一つ以上ある不飽和脂肪酸をまとめて「トランス脂肪酸(trans-fat:TFA)」と呼んでいます。トランス脂肪酸は、トランス型不飽和脂肪酸ともいいます。主として植物性の油脂を加工する過程で発生する脂肪酸で、不飽和脂肪酸は常温では液体ですが、トランス脂肪酸は固体です。多量に含む代表的なものは、サラダ、マーガリン、ショートニング、マヨネーズです。これらを使用したクッキーやスナック菓子などにも多く含まれます。世界的にみても、このトランス脂肪酸は健康への悪影響が指摘されており、各国で規制の対象となっています。

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〔管理者コメント

健診結果をもとに身体活動指導に当たる指導者としての経験では、LDLコレステロール値が高値であってもリスクを感じない方が結構おられました。どちらかといえば兼ねてよりいわれていた高中性脂肪値、低HDLコレステロール値の方にリスクを感じていました。もちろん、加えて、男性、肥満、喫煙習慣有りであればなおのことですが・・・。今後、総コレステロールの復活に合わせて、動脈硬化指数(総コレステロール-HDLコレステロール)/HDLコレステロール)の取り扱いはどうなるのでしょうか?