サイクリングで糖尿病患者の死亡リスク減

 デンマーク・Centre for Physical Activity ResearchのMathias Ried-Larsen氏らが糖尿病患者のサイクリングと死亡リスクの関連について、EPIC(欧州10カ国 フランス、イタリア、スペイン、英国、オランダ、ギリシャ、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの23施設で登録された大規模前向きコホート研究)のデータを用いて検討した報告。2021年7月19日 JAMA Intern Med(オンライン版)に記載。

 EPICに参加した49万2,763例のうち、ベースライン調査時に糖尿病を有していたのは1万995例。解析対象は7,459例(平均年齢55.9歳、女性52.6%、平均糖尿病罹病期間7.7年、サイクリング習慣なし63.0%)。5,423例がベースライン調査(1992~98年)および第2回調査(1996~2011年)を完了。ベースライン調査ではサイクリングに費やした1週間当たりの時間、第2回調査ではベースライン調査後のサイクリング習慣の変化について自己申告。

 全体では11万944人・年(平均14.9年)の追跡期間中に全死亡が1,673例、CVD(心血管疾患)死は811例発生。

 ベースライン時にサイクリング習慣の報告がなかった対照群に比べ、習慣があったサイクリング実施群では、以下の通り全死亡リスクの有意な低下を確認。(下図左参照)

1~59分/週群:調整後ハザード比(aHR)0.78(95%CI 0.61~0.99)
60~149分/週群:同0.76(同0.65~0.88)
150~299分/週群:同0.68(同0.57~0.82)
300分/週以上群:同0.76(同0.63~0.91)

 またCVD死については、サイクリングを60~149分/週および150~299分/週実施した群で有意な低下が認められた。(上図右参照)

1~59分/週群: aHR 0.79(95%CI 0.56~1.11)
60~149分/週群:同0.75(同0.60~0.93)
150~299分/週群:同0.57(同0.44~0.76)
300分/週以上群:同0.80(同0.62~1.03)

 第2回調査でサイクリングに費やす時間に変化があった5,423例では、5万7,802人・年(平均10年)の追跡期間中に全死亡が975例、CVD死は492例発生。

 2回の調査ともサイクリング習慣がなかった対照群と、サイクリングを途中でやめた群で全死亡リスクに有意差はなかった(aHR 0.90、95%CI 0.71~1.14)。しかし、ベースライン調査後にサイクリングを始めた群(同0.65、0.46~0.92)、2回目の調査時もサイクリング習慣があった群(同0.65、0.53~0.80)では、いずれも全死亡リスクの有意な低下が認められた。

 同様にCVD死についても、サイクリングを途中でやめた群では有意差はなかった(aHR 1.03、95%CI 0.75~1.41)のに対し、ベースライン調査後にサイクリングを始めた群(同0.53、0.31~0.90)、2回の調査ともサイクリング習慣があった群(同0.56、0.41~0.75)では有意なリスク低下が見られた。

 報告者らは「糖尿病患者を長期追跡した検討から、サイクリング実施と危険因子を調整後の全死亡およびCVD死亡リスク低下との関連が示された。ただし、サイクリングと死亡の関係を詳しく分析するには、サイクリング量の測定とサイクリング関連の事故、サイクリング中の大気汚染による呼吸器疾患への影響などについての検討が必要である」とまとめている。


「Association of Cycling With All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality Among Persons With Diabetes: The European Prospective Investigation Into Cancer and Nutrition (EPIC) Study」
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34279548/