Sebastien FMChastinらの報告。「Sports Med. 2021 Apr 20;1-14」に記載。
システマティックレビューとメタ解析を、ガイドライン(PRISMA:Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)に沿って実施。1980年1月~2020年4月14日に公開され、査読システムのある雑誌に掲載された英語論文を検索。適格基準は、18歳以上の成人を対象に行われた無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)または前向き観察研究。また、アスリートおよび高度なトレーニングを行っている人を対象とした研究は除外。結果666件を全文評価の対象とし、最終的に7件の前向き観察研究と48件のRCTを含む55件を抽出、解析。
結果
1 感染症罹患リスク31%減、感染症関連死リスク37%減を確認
6件の観察研究(合計対象者数55万7,487人)のメタ解析の結果、身体活動ガイドラインで推奨されている「中等強度以上の運動を週に150分以上」継続して行っている人は、感染症の罹患リスクが31%低く(ハザード比(HR)0.69;95%CI 0.61~0.78)、4件の観察研究(合計対象者数42万2,813人)のメタ解析の結果死亡リスクは37%低いことがわかった(HR 0.63;95%CI 0.55~0.72)。(上図参照)
2 免疫能の向上を確認
感染症リスク低下につながる免疫能の向上も認められ、習慣的に身体活動を行っている人はリンパ球数が有意に多い傾向がみられた。
3 ワクチン接種の効果を高めることを確認
A型/B型インフルエンザウイルス、肺炎球菌、水痘帯状疱疹ウイルスに対するワクチンの効果を調べた計6件の研究(合計対象者数497人)では、抗体価のSMD(標準化平均差:Standardised mean difference) 0.142;95%CI 0.021~0.262)で身体活動を行っている群のほうが有意に高レベルだった。これらの研究における身体活動実施群は、ワクチン接種の20週間前から週に3回、60分間の有酸素運動、または有酸素運動と筋力強化運動を組み合わせて行っていた。
報告者らは、「この結果は、習慣的な身体活動が感染症に対する抵抗力を高めることを示している。適度な身体活動は感染症への罹患リスクや死亡のリスクを減らし、ワクチン接種の効果を高める。このことから、現在のCOVID-19パンデミックの影響を軽減するために、一般の人々の習慣的な身体活動を奨励する必要がある」とまとめている。
「Effects of Regular Physical Activity on the Immune System, Vaccination and Risk of Community-Acquired Infectious Disease in the General Population: Systematic Review and Meta-Analysis」
https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-021-01466-1#Sec16