仕事、家事、移動も含めた中高強度身体活動はがんのリスクを低下させる!(多目的コホート研究)

がん,運動,日常生活活動,中高強度身体活動

 多目的コホート研究(JPHC Study:Japan Public Health Center-based prospective Study)。国立がん研究センター 松永 崇 氏らの研究グループの報告。2025年10月9日 多目的コホート研究のホームページにて公表。研究成果は2025年10月4日「Journal of Epidemiology」に掲載。

 仕事、家事、移動およびなど余暇以外の活動も含めた中高強度(3METs以上)の身体活動が、全がんおよび部位別がん(発生する臓器別のがん)のリスク低下をもたらすのかを検討。

 平成12年(2000年)と平成15年(2003年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内に在住で、2000年と2003年に行った10年後調査の参加者で、がんの既往がなく、身体機能に制限のない50–79才の男女84,054名が対象。

 中高強度(3METs以上)の身体活動量を、「0」、「0.1-7.4」、「7.5-62.9」、「63.0-170.5」、「≧170.6」METs・時/週の5グループに分類。「0」グループと比較して、それ以外の4グループの全がん、部位別がんのリスクを検討。

 以下結果の抜粋

 男性は中高強度身体活動が増えるほど、全がんのリスクが低下する傾向はあったが、統計学的有意な結果ではなかった。女性は世界界保健機関(WHO:World Health Organization)の推奨量に満たない中高強度身体活動(0.1–7.4METs・時/週:1日約20分歩くよりも少ない量に相当)でも、それ以上の量でも全がんのリスクが統計学的に有意に低下。(上図参照)

 部位別では、男性の結腸がん、女性の膀胱がんと子宮体がんで有意にリスクが低下。加えて、中高強度身体活動を、余暇とそれ以外(仕事、家事、移動)に分けて全がん、部位別がんへの影響を確認したところ、余暇、非余暇に関わらず、男性は結腸がん、女性は全がんのリスク低下を確認。


 報告は、「余暇だけではなく仕事、家事、移動も含めた中高強度の身体活動でがんのリスク低下が認められたことから、日常生活の様々な場面で身体活動を取り入れることの意義が示された。国民の身体活動量を増やすために、個人に働きかけることに加え、身体活動を行いやすい環境づくり(徒歩や自転車での通勤・通学がしやすい街や道路の整備など)や制度設計を行うことも効果的かもしれない」とまとめている。


「中高強度身体活動と全がんおよび部位別がんの関連」(多目的コホート研究)
 https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/9663.html
「Moderate-to-vigorous physical activity and total and site-specific cancer: the Japan Public Health Center-based Prospective Study」(Journal of Epidemiology)
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20250041/_article