特定健康診査・特定保健指導により国民健康保険加入現役世代の健康が改善!ただし、無職者や賃貸住宅居住者には改善が見られなかった!(早稲田大学 他)

(アイキャッチ画像、上図は本文とは直接は関係ありません)

 早稲田大学 及川 雅斗 氏、野口 晴子 氏、川村 顕 氏、高知大学 阿波谷 敏英 氏らの研究グループによる報告。2025年9月12日早稲田大学のホームページにて公表。研究成果は、2025年8月19日 「Journal of Health Economics」に掲載。

 2008年に日本で導入された特定健康診査・特定保健指導(いわゆるメタボ健診制度)が、国民健康保険(国保)加入の現役世代の健康と生活習慣に与えた影響を、自治体の財政的努力の度合いに着目して分析。

 結果のポイント

・ 2008年に導入されたメタボ健診制度により、保健事業に投じる費用が拡大した自治体では、国保加入者の生活習慣病罹患率が10.4%減少し、特に複数疾患を抱える人の割合が35.8%減少。
・ 試算によると、生活習慣病患者減少に伴う医療費削減額は、メタボ健診制度導入による保健事業費の増加額に比べ9倍であることが明らかになった。
・ メタボ健診制度により、国保加入者の禁煙が進み、飲酒量が減り、8,000歩以上歩く人が増加した。
・ メタボ健診制度は、自営業者や持ち家世帯といった経済的に余裕のある世帯には効果があったが、失業者や賃貸住宅居住者には改善が見られなかった。


 報告は、「自治体が自営業者や無職者の健康を守るために費やした財政支出等を含む努力が、社会全体の医療費削減につながるための、極めて有効な投資であることが示された。しかし、最も支援を必要としている(ヴァルネラブル(vulnerable)な)人々、特に無職者の方々にその恩恵が届いていないという現実も浮き彫りになった。今回の研究成果が、未来の社会保障制度のあり方を考える上で、政策担当者や市民にとって、具体的な議論の出発点となることを強く願う」とまとめている。


「メタボ健診制度で国保加入現役世代の健康改善」(早稲田大学)
 https://www.waseda.jp/inst/research/news/82016
「Impacts of health checkup programs standardization on working-age self-employed and unemployed: Insights from Japan’s local government response to national policy」(Journal of Health Economics)
 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167629625000815