健診で糖尿病を指摘された後の「早期受診」（1年以内）で 10年間の心血管疾患リスクが27％低下（横浜市立大学 他）
横浜市立大学大学院 鱶口 清満 氏らの研究グループの報告。2025年12月15日 横浜市立大学、国立精神・神経医療研究センターのホームページで公表。研究成果は、2025年11月23日に「Diabetes Research and Clinical Practice」に掲載。
レセプトデータベース（JMDC Claims Database）を用い、2005年から2021年の間に健診で初めて糖尿病（HbA1c 6.5%以上または空腹時血糖126mg/dL以上）と判定された40〜74歳の男女148,288名が対象。研究手法として、「標的試験エミュレーション＊」を採用。対象者を「1年以内に受診した群（早期受診群）」と「1年以内に受診しなかった群（非受診群）」に分け、年齢、性別、検査値、生活習慣、行動変容への意欲など30以上の変数を用いて重み付けすることで統計学的に背景因子を均等にした上で、その後10年間の心血管疾患の発症リスクを比較。
結果
早期受診群は非受診群と比較して、複合心血管疾患（虚血性心疾患または脳卒中）の発症リスクが27％低い（リスク比 0.73）ことが示された。（上図参照）
また、そのメカニズムとして、早期受診群では1年後の時点で糖尿病治療薬だけでなく、高血圧や脂質異常症の治療薬が適切に開始されている割合が高く、生活習慣改善への意欲も向上していることが確認された。
＊ 標的試験エミュレーション（Target Trial Emulation）
観察データ（既存のデータベースなど）を用いて、理想的なRCT（ランダム化比較試験）を可能な限り模倣するフレームワーク。ハーバード大学の研究者らによって提唱され、因果関係に迫るための疫学手法として、近年普及している。
報告は、「健診での”早期発見“を確実な”早期治療“へ結びつけることの重要性を科学的に実証したものであり、健診後の受診勧奨やフォローアップ体制の強化といった公衆衛生政策の推進に大きく寄与することが期待される」とまとめている。
「健診で糖尿病を指摘された後の「早期受診」で 10年間の心血管疾患リスクが27％低下」（横浜市立大学）
https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/20251215goto.html
「健診で糖尿病を指摘された後の「早期受診」で 10年間の心血管疾患リスクが27％低下」（国立精神・神経医療研究センター） https://www.ncnp.go.jp/topics/detail.php?@uid=4W6y0m0gXX5teg7Y
「Effect of early healthcare visits on cardiovascular disease risk in people with newly screened diabetes: emulating a target trial using a large insurance database」（Diabetes Research and Clinical Practice） https://www.diabetesresearchclinicalpractice.com/article/S0168-8227(25)01035-6/fulltext