日本型食(和食)は、腸内環境を整えて運動障害の進行を遅らせる!?(中部大学 他)

(アイキャッチ画像、上図は本文と直接は関係ありません)
中部大学 平山 正昭 氏らの研究グループの報告。2025年11月10日 同大学ホームページにて公表。研究成果は、2025年10月28日に「Journal of Neural Transmission」に掲載。
食物繊維を多く摂取する日本人と、高脂肪で動物性たんぱくの摂取量が多い傾向があり、パーキンソン病の発生率が日本人の2倍近い台湾人の公開データから、生活習慣や環境要因が病気の発生や健康状態の変化に対する影響を比較。腸内細菌叢(腸内フローラ)*1、短鎖脂肪酸(SCFA)*2、ポリアミン*3、ビタミンB群といった腸内代謝物を統合的に解析し、パーキンソン病*4による運動機能の障害やその進行度合いを客観的に評価する運動症状進行指標との関連を検証。
結果
発酵食品、海産物、食物繊維を多く含む根菜や海藻、きのこ等の日本型食が育てる腸内環境は、神経保護に資する腸粘膜バリア維持、免疫調整、神経栄養の支援といった代謝ネットワークをサポートし、運動障害の進行を“遅らせる可能性”が示唆された。
報告は、「本研究成果は、「腸から脳を守る」という視点で、非薬物的戦略の可能性を広げるもの。日常的に取り入れやすい日本型食を軸に、腸内細菌と代謝物の維持・回復を図ることで、進行抑制につながる実装可能な手段の確立を目指す」とまとめている。
*1 腸内細菌叢(腸内フローラ)
大腸に棲む細菌が腸内細菌。通常ウイルスなどの異物は免疫システムにより体内から排除されるが、腸内細菌は免疫寛容という仕組みにより排除されない。腸内細菌は、菌種ごとの塊となって腸の壁に隙間なくびっしりと張り付いており、品種ごとに並んで咲く花畑(フローラ)にみえることから腸内フローラと呼ばれる。
*2 短鎖脂肪酸(SCFA:short-chain fatty acids)
腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖などを分解してつくる物質。肥満抑制、アレルギー予防、持久力の向上など、数々の健康効果が最新の研究で報告されている。
*3 ポリアミン
全ての細胞内で作られる物質。細胞の増殖に深く関連しており、細胞分裂がさかんな組織では高濃度存在する。ポリアミンを作る能力は、年を取るにつれ減少する。健康を維持するのに必須の物質であると考えられ、近年、アンチエイジング物質、老化抑制物質として注目されている。
*4 パーキンソン病
脳の特定の神経細胞が少しずつ減っていくことで、体の動きが不自由になる病気。 脳の中で体のスムーズな動きを調整する神経伝達物質のドーパミンが不足することが主な原因と考えられている。代表的な症状には、手足のふるえ、動きの遅さ、筋肉のこわばり、体のバランスの取りにくさなどがある。 日本では、1000人に1~1.5人ほどの患者がいる。
「日本型食が、パーキンソン病の運動症状進行“抑制”の可能性を示唆 -和食×腸内細菌で“進行にブレーキ”の兆し-」(中部大学)
https://www.chubu.ac.jp/news/52768/
「Linking diet, gut microbiota, and metabolites to Parkinson’s disease risk: a shotgun metagenomic comparison of Japanese and Taiwanese cohorts」(Journal of Neural Transmission)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00702-025-03052-5