70年間で職業上の身体活動強度が少なくとも1割以上低下(東京大学)

 東京大学大学院 鎌田 真光 氏らの報告。2024年8月8日のプレスリリース。東京大学のホームページにて公表。

 1953年から 2022年までの労働力調査データを用い、職業ごとの身体活動強度のデータと組み合わせることで、日本全体で職業上の身体活動強度がどのように変化してきたか分析した結果。

 過去70年間で、強度の高い職業から低強度・座業中心の職業への転換が進み、身体活動強度の平均値は一貫して低下していることが分かった。(上図参照)

 また、各職業分類の活動強度をもとに、座業中心(≦1.5 METs)、低強度(1.6-2.9 METs)、中強度(≧3 METs)に再分類し、その就業者割合の推移を算出。

 過去70年間で中強度の職業が著しく減少し、座業中心と低強度の職業が増加する傾向が見られた。(上図参照)

 報告は、「日本では労働者の職業がより低い活動強度の職業へと移行しており、全職業の平均活動強度が低下し続けていることが示された。世界保健機関(WHO)や厚生労働省のガイドラインでは、1.5METs以下の「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす)」ことを推奨している。健康づくりに向けた取り組みとして、座業(デスクワーク)中心の職業においても、昇降デスクの活用や仕事中の座業時間の短縮を図り、また、仕事以外の場面での身体活動・運動を促進するなど、多面的な取り組みが求められる」とまとめている。

METs(メッツ): Metabolic equivalents の略記。身体活動の強度を表す指標で、安静時のエネルギー消費量を1METsとして何倍に相当するかを表している。国際的な身体活動ガイドラインでは、3METs以上を中高強度の身体活動(Moderate-to-vigorous physical activity)、1.6METs以上 3METs未満を低強度、1.5METs以下を座業中心(sedentary; 座って非活動的な状態)と分類することが多く、本研究でも同様に分類。職業上の身体活動強度について、何METsなら健康に良いという明確な基準はないが、世界保健機関(WHO)や厚生労働省のガイドラインでは、1.5METs以下の「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす)」ことを推奨している。


「日本における70年間の職業上の身体活動強度の変遷」(東京大学)(PDFファイル)
 https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400245471.pdf


〔参考〕

(作図:healthy-life21.com)