多目的コホート研究(JPHC Study:Japan Public Health Center-based prospective Study)の報告。2023年7月5日 多目的コホート研究ホームページにて公表。研究成果は2023年6⽉「Public Health」に掲載。
平成12年(2000年)と平成15年(2003年)に、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、高知県中央東の5保健所(呼称は2019年現在)管内に在住者のうち、アンケートに回答した50~79歳の男性19,396名、女性22,859名が対象。平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、排便頻度、便の硬さと認知症との関連を調査。
排便頻度は、「便通はどのくらいの頻度でありますか?」という質問に対する回答の(週に3回未満、週に3~4回、週に5~6回、毎日1回、毎日2回以上)から把握。便の硬さは、「普段の大便の状態は?」という質問に対する回答の(下痢便、軟便、普通の便、硬い便、非常に硬い便、下痢と便秘を繰り返す)から把握。
便の頻度の解析は、「毎日1回」、便の硬さの解析は、「普通の便」を基準として、他の回答をしたグループにおける認知症になるリスク(ハザード比)をそれぞれ算出。
調査期間内に、男性1,889名(9.7%)、女性2,685名(11.7%)が認知症と診断された。
排便の頻度は、男性は、「1日1回」群と比較した多変数調整ハザード比は、「1日2回以上」群は1.00(95%信頼区間:0.87-1.14)、「週5~6回」群は1.38(1.16-1.65)、「週3~4回」群は1.46(1.18~1.80)、「週3回未満」群は1.79(1.34~2.39)(傾向性P<0.001)。女性は、「1日2回以上」群は1.14(0.998-1.31)、「週5~6回」群は1.03(0.91-1.17)、「週3~4回」群は1.16(1.01-1.33)、「週3回未満」群は1.29(1.08-1.55)(傾向性P=0.043)。排便頻度が少ない群ほど認知症リスクが高くなった。(上図参照)
便の硬さは、「普通の便」群と比較した調整ハザード比は、男性は、「硬い便」群1.30(1.08~1.57)、「非常に硬い便」群2.18(1.23~3.85)。女性は、「硬い便」群1.15(1.002-1.32)、「非常に硬い便」群1.84(1.29-2.63) 。便が硬い群ほど認知症リスクが高くなった。(上図参照)
報告は、「男女ともに、排便頻度が低いほど、また便が硬いほど、認知症リスクが高くなった。メカニズムを含めた今後のさらなる研究が必要」とまとめている。
「排便習慣と認知症との関連」(多目的コホート研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/9173.html
「Bowel movement frequency, stool consistency, and risk of disabling dementia: a population-based cohort study in Japan」(Public Health)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0033350623001671