多目的コホート研究(JPHC Study:Japan Public Health Center-based prospective Study)の報告。2022年3月29日「JAMA Network Open」に掲載。
平成12年(2000年)と平成15年(2003年)に、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、高知県中央東の5保健所(呼称は2019年現在)管内に在住で、調査開始時のアンケートに回答した50~79歳の43,896人の男女が対象。平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、身体活動と要介護認定情報から把握した認知症との関連を検討。
2006年から2016年までの要介護認定情報から、5,010人が認知症と診断されていることを確認。
解析の結果、総身体活動量、総中強度以上の身体活動量、余暇の中強度以上の身体活動量が多いことは、認知症のリスク低下と関連がみられた。(上図参照)
認知症と診断される前の段階の身体活動の低下による因果の逆転の可能性を検討するために、追跡を開始してから初期に診断された認知症を、1年ずつ期間を延ばして除外した結果、総身体活動量は男性7年以上、女性8年以上で、総中強度以上の身体活動量は男性7年以上、女性9年以上でみられなくなった。余暇の中強度以上の身体活動量は女性は9年以上でみられなくなったが、男性は統計学的に有意な関連が残った。
報告は、「総身体活動量および総中強度以上の身体活動量と認知症の間の活動量が高いとリスクが下がるが、追跡初期に診断された認知症を除外するとその関連がみられなくなったことは、認知症と診断される前の活動性低下に影響を受けている可能性が考えられる。一方で、男性の余暇の中強度以上の身体活動量は追跡初期に診断されたケースを除外しても、認知症のリスク低下との関連が見られた。この理由は、知的活動を伴う中高強度の余暇の身体活動や、身体活動を通した社会的なつながりが、認知症の予防に効果的だった可能性も考えられる」とまとめている。
「身体活動と認知症との関連」(多目的コホート研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8908.html