京都大学大学院医療経済学分野教授の今中雄一氏らの報告。2021年7月12日 Scientific Reports(2021; 11: 14054)に掲載。
研究グループは同分野のQuality Indicator/Improvement Project(QIP)のデータベースを用いて、入院日が2018年7月1日~20年6月30日におけるアルコール関連の肝疾患および膵炎による入院例を抽出。全体で302万6,389例の入院が発生し、うちアルコール関連疾患の入院は1万242例(肝疾患6,371例、膵炎3,871例)。この抽出データを日本政府が非常事態を宣言した2020年4月から6月期間をCOVID-19流行時(以下「流行時」)と定義し、2018年7月~2020年3月(以下「流行前」)と比較検討。
アルコール性肝疾患と肝硬変の入院率は「流行時」に徐々に増加。「流行時」におけるアルコール性肝疾患および膵炎の入院率を、「流行前」と比較するとアルコール性肝疾患のRRは1.21(95%CI 1.08-1.35)、肝硬変の相対リスクは1.21(95%CI 1.06-1.38)、急性膵炎のRRは1.28(95%CI 1.08-1.51)、慢性膵炎のRRは1.10(95%CI 0.84-1.44)。(上図参照)
報告者らは「大規模データベースを用いた研究でCOVID-19の流行が飲酒に関連する肝疾患や膵炎の入院率上昇に関連している可能性が示された。COVID-19の流行が収束しない状況において、飲酒関連肝疾患や膵炎の増加が続く可能性があり、自粛期間中の飲酒には注意する必要がある」と指摘している。
「The impact of the COVID-19 epidemic on hospital admissions for alcohol-related liver disease and pancreatitis in Japan」
https://www.nature.com/articles/s41598-021-92612-2