「スポーツ観戦」は高齢者のうつリスクを3割程度下げる!-全国の高齢者を対象とした調査結果-(筑波大学)

 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)の2019年の調査データを用いた横断研究。筑波大学体育系助教 辻大士らの報告。2021年5月19日 ScientificReportsに掲載。

 全国60市町村の21,317人の高齢者が対象。「直接現地」ならびに「テレビ・インターネット」での過去1年間のスポーツ観戦(含 プロスポーツに限らず、地域のスポーツクラブ・団体や部活動などの観戦)の頻度を調査。うつ傾向は高齢者用うつ尺度(15項目版geriatric depression scale)を用いて評価。観戦頻度との関連を回帰分析により検証。さらに、スポーツ観戦がうつ傾向のリスクを緩和するメカニズムを探るため、地域への信頼や愛着、助け合いの豊かさや、友人と会う頻度・人数を調査し、これらが経路となっているかを分析。

 直接現地で4,808人(22.6%)、テレビ・インターネットで16,576人(77.8%)が、年に数回以上スポーツを観戦していた。また、4,559人(21.4%)がうつ傾向を示した。

 観戦していない人と比較して、現地観戦は年に数回で0.70倍、月1~3回で0.66倍(上図左参照)。テレビ・インターネット観戦は、年に数回で0.86倍、月1~3回で0.79倍、週1回以上で0.71倍(上図右参照)という結果。

 また、いずれの観戦についても、観戦者は非観戦者よりも地域への信頼や愛着、助け合いが豊かであり、友人と会う頻度や人数も多く、それらが経路となって低いうつ傾向のリスクと関連していることを確認。(観戦とうつ傾向の関連性を100とした場合、10~25%はこれらの経路で説明された)。

 報告者らは「スポーツを現地で月1回~年数回観戦する、あるいはテレビ・インターネットでより頻繁に観戦することは、運動・スポーツを日ごろ実践しているかどうかに関わらず、高齢者のうつ傾向のリスクを緩和することが示された。さらに、スポーツを観戦している人ほど地域に愛着や信頼を持っていたり、友人との関りが豊かであったりすることによって、うつ傾向のリスクの低下がもたらされている可能性が示された」とまとめている。


「高齢者 スポーツを「観戦」するだけでうつリスク3割低い」筑波大学 プレスリリース(PDFファイル)
 https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=3849&room_id=549&cabinet_id=234&file_id=9413&upload_id=12291
「Watching sports and depressive symptoms among older adults: a cross-sectional study from the JAGES 2019 survey」
 https://www.nature.com/articles/s41598-021-89994-8