米デューク大学のMaxwell Elliott氏らの研究結果。研究の詳細は「Nature Aging」に3月15日発表。
Elliott氏は、「老いは生涯にわたって続くプロセスだ。60歳になって突然老い始めるわけではない」。かくしゃくとした80歳の人がいれば、複数の病気や障害を抱える50歳の人もいる。その違いを暦年齢だけで説明できないことは明らかだ。こうした違いは、生物学的な老化により説明できる。しかし、具体的にどの時点からそれが加速するのかについては、これまで不明だった。
そこで、1972~1973年に出生した1,037人のニュージーランド人を45歳まで追跡したデータを分析。対象者の生物学的な老化のスピードは、26、32、38、および45歳時に測定した心血管や代謝、免疫、歯、肺、腎臓などの機能に関わる19種類のバイオマーカーの結果に基づき定量化。
結果、老化のペースには大きな個人差があり、暦年で1歳年を取るごとに、老化のもっとも遅いグループは生物学的には0.40歳であったのに対して、もっとも早いグループは2.44歳であった(上図参照)。 また、老化のペースが早い人には、同年代の人と比べて遅い歩行速度、弱い握力、低いバランス能力、視力や聴力の低下などの高齢者に典型的な特徴が認められた。
さらに、老化のペースが早い人と、そうでない人との間には、頭脳の明晰さにも違いが見られた。そのほか、外見が実年齢より上に見え、老化について否定的な見方をする傾向が強く、75歳まで生きられないと考えている人が多かった。
報告者は、「45歳という比較的まだ若い段階で、生物学的な年齢の差がこれほど大きく開いていることに驚いた。ただし、40代で既に自分が年を取ったと感じていても、失望する必要はない。健診を受け、血圧を管理し、運動や健康的な食生活を始めるのに遅すぎることはない。過去を変えることはできないが、介入により状況を変えていく時間は十分にある。この研究結果をより広い見地で捉えて、暦年齢を重視するのはやめるべきだ。生物学的な老化のスピードに対する早い段階での介入は、命を救うことにつながるとともに、QOLの向上をもたらす」とまとめている。
「Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy」
https://www.nature.com/articles/s43587-021-00044-4