国立病院機構京都医療センター 池上 健太郎 氏らの研究グループの報告。2025年5月26日、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターのホームページで公表。研究成果は、2025年5月8日、「Journal of Cachexia, Sarcopenia Muscle」に掲載。
武田病院健診センター(京都府)で一般健診を受診した40歳以上の263名(男性163名、女性100名)が対象。四肢骨格筋量(ASM:appendicular skeletal muscle mass index)/身長、 ASM/BMI(Body Mass Index)、握力、握力/上肢骨格筋量、位相角(PhA:Phase Angle)※を測定。これらの指標と認知機能との関連を、モントリオール認知機能評価日本語版(MoCA-J:Montoreal Cognitive Assessment‐J)を用いて検討。
結果

女性では年齢にかかわらず、PhAが高い(筋質がよい)ほど軽度認知障害(MCI)である可能性が低くなるということが示された。また、PhAと6つの認知機能下位項目(「記憶」「言語」「遂行機能」「注意」「視空間認知」「見当識」)との関係では、女性は「記憶」「言語」「遂行機能」「注意」、男性は「記憶」との関連が認められた。
報告は、「筋質評価・PhAに関する新規知見は、サルコペニアと認知症との関連性を示した。今後のサルコペニアと認知症の予防戦略や早期診断法の開発等につながるものと期待される」とまとめている。
※PhA(Phase Angle)
PhA(フェーズアングル、位相角)は、生体インピーダンス法(BIA:Bioelectrical Impedance Analysis)による身体組成分析で得られる生体指標の1つで、細胞の健康状態や筋質を反映。フェーズアングルは細胞膜で発生する電気抵抗を角度で表し、高値の場合はサルコペニアのリスクが低く、低値になるとそのリスクが上昇する、新たなサルコペニア指標として注目されている。
「中高年のサルコペニアだけでなく軽度認知障害(MCI)の早期判別における筋質評価・Phase Angle(フェーズアングル)の有用性を証明」(国立長寿医療研究センター) https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20250527.html
「Phase Angle Is a Potential Novel Early Marker for Sarcopenia and Cognitive Impairment in the General Population」(Journal of Cachexia, Sarcopenia Muscle) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jcsm.13820